南場智子 不格好経営をレビューしてみた
こんにちは、ダンです。
先日、ダンはADHDであることを記事に書いたのですが、
ADHDなりに約6年程コンサルタントとして活動してきました。
専門コンサルタントが5年、総合コンサルタントが1年の計6年ですから
それなりにコンサルタントとしてご飯を食べてきたつもりです。
ちなみに、コンサルタントになりたい思いは学生時代から既に何となくは持っていたのですが
社会人になり、それを大きく後押ししてくれるキッカケになったのが
今日紹介する不格好経営の著者でもある、南場智子氏。
当時アメブロでブログを書かれていて(現在はあまり更新されていないようですが)、そのブログを読んだのがキッカケです。
書かれた記事を幾つか斜め読みしながら、
何だこの人やべーな、ハチャメチャにおもろいブログ書くやんwへえ、DeNAって会社の社長なんだ。女性なのに凄いな。え、しかも東証一部…(※旧称。現在東証プライム)
と率直に思った所がスタートラインでした。そこからグーグル先生に南場智子さんのプロフィールをご教示頂き、調べていくと
え、新潟高校から津田塾…?そのあとマッキンゼー?ハーバードのMBA持ち?頭クラクラしてきた…この人無茶苦茶エリートやん…俺もコンサルタントになってこの人みたいにオモロイ人生送りたいわ…頑張ろう!
と思うようになり、そこからダンが本格的にコンサルタントを目指す道のりが始まって行ったのです。ちなみにそこから現在まで15年以上経過していますが、
今でも一番好きな経営者は誰かと聞かれたら南場智子さんと即答するレベルで好きです。重要なのは、女性としてではなく経営者としてという所でしょうか。
そんな素敵なキャリアだけでなく、表現力にも溢れ、人間力にも溢れる南場智子氏が書かれた本、不格好経営について今日はレビューしていきます。
きっかけはクライアントの一言
南場智子さんが独立をしようと思ったのは、コンサルティングファームでもあるマッキンゼーで働いていた時にクライアントから言われた一言だったそうです。
熱心に、これからはインターネットの時代であることを前提に、ネットオークションについてクライアントに力説していた南場さん。
こちらの記事にもあるように、マッキンゼーには「バリューを出す」、つまりクライアントに対し価値を提供することを徹底するカルチャーがある為、
南場さんもそのカルチャーに従い、クライアントにバリューを出すために熱心にプレゼンを行っていたそうです。
「そんなに熱心にプレゼンするなら南場さんがやれば?」
というクライアントからの一言で南場さんは自身でやってみようと思いたち、マッキンゼーを退社して有限会社ディー・エヌ・エー、現在のDeNAの前身を立ち上げます。
現在は横浜DeNAベイスターズの経営を行う等スポーツ事業にも参加され、その前には「モバゲー」でゲーム事業を一気に成長させましたが、
もともとはネットオークションの運営会社としてのスタートです。
起業当初からの苦労が凄まじかった
野球チームを経営して、ゲーム事業を大きく花開かせて…有名コンサルファームのパートナーで、ハーバードのMBA持ちだからさぞかし順風満帆だったんだろう…
と思いきや、起業当初は私達の想像以上に苦労されたそうです。
ネタバレの為詳しくは書けませんが、
にてその当時の様子が詳しく書かれています。
経営者は最大の加害者である、人のせいにするな、被害者ぶるな
そのドタバタを当時夫である紺屋勝成氏に話した所、表題のような答えが返ってきたことで我に返ったそうです。
紺屋勝成氏は2016年に53歳の若さで亡くなられていますが、USENの取締役を務められる程優秀だった方です。
妻である南波氏に対し、夫として、ビジネスマンとして愛のあるアドバイス。素晴らしいと思います。
余談ですが、ベンチャーで現在No.2として働いているダンも仕事柄多くの経営者と商談したり話す機会があるのですが、この点は物凄く共感出来ます。
従業員の不出来を愚痴ったり、会社が上手くいかない理由を外的要因にして正当化する経営者は99%ポンコツで、誤解を恐れずに言うとカスです。経営って本当に大変で苦しいので、気持ちはわかりますけどね。
伝説の経営コンサルタント、一倉定氏も同様のことを仰っています。
世の中は常に変わるという前提で社長はモノを考えよ。
事業経営の成否は、99%社長で決まる。
外部環境のせいにするな、すべては経営者の責任だ。
いい会社とか悪い会社とかはない。あるのは、いい社長と悪い社長である。
電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任である。
優れた社長は「うちの社員はよくやってくれる」と人に語り、能力のない社長ほど社員の無能ぶりを他人にこぼす。
ワンマン決定は権力の現れではない。責任の現れなのである。すぐれた決定は、多数の人々の意見から出るのではなくて、すぐれた経営者の頭から生まれるのだ。
キレイな理屈通りに社員は動かない。
※https://plus.nbc-consul.co.jp/blog/immutableより引用
何かコトが起きた時に会社のオーナーである(ことが多い)社長が責任を取らず他責にしてたら、従業員だって簡単に見抜きますし、そのうち愛想を尽かして辞められるのがオチです。
コンサルタントが経営者になる際の魔法のコトバ「unlearning」
コンサルタント時代に必要とされたロジックに裏打ちされたパワポ作成力であったり、フレームワークは、経営をする際ないよりはあった方がいいレベルで
コンサルタントと経営者はビジネスのプロフェッショナルと言う点で共通性がありますが、
実はプロサッカー選手とプロ野球選手ぐらい、求められる能力が違います。
そして、コンサルタント時代理論・理屈でわかっていたことを実際に経営の場でアウトプットしてみたら期待していた成果と全然違うものが出てきたことに愕然とします。
理論・理屈だけでは経営は成り立たず、失敗する度一つ一つ学んで行ったそうです。
このことを南場さんは「unleaning」と言っておりますが、この表現本当に素晴らしいと思っています。かくいう私も南場さんの後を追うかのように同じ体験をしております(笑)
コンサルタントとして学んだ知識は、むしろ経営という仕事をしていく上で足かせになることがあります。まぁ考えたら当たり前ですよね。
俺サッカー出来るから、野球だって同じくらい出来るもん
なんてサッカー選手が言おうものなら、誰だって指さしてゲラゲラ笑うでしょう。それと同じことです。
サッカーにはサッカーに必要な素養が、野球には野球に必要な素養があり、一部共通するものもあるけれど、本質的には違うものであると認識する必要があります。
代表的な違いで言うと、理論・理屈を描くのがコンサルタントで、それを実行するのが実業家であり、経営者です。
ちなみに、経営者とコンサルタントで一番の違いは何か?と聞かれたら
意思決定のフェーズにおける役割とダンなら答えます。
意思決定を促す側と、意思決定する側の埋められない決定的な差
言葉で書くとシンプルで僅かな差しかないように見えますが、この差はビジネスに於いて経験しない限り埋まらない絶対的な差です。
100のロジックを持っているコンサルタントが、たった1回の意思決定をした経営者に及ばないのは、それだけdoerにのしかかるプレッシャーが大きく、その中で意思決定することが想像以上に大変だからです。
だって考えてもみてくださいよ。自分の意思決定が間違って最悪致命傷になって会社潰れた場合、自分の生活は勿論社員やその家族を巻き込んで路頭に迷わせる可能性もあり、取引先にも多大な迷惑をかけるんですよ。
意思決定を下す側は、そのプレッシャーを背負った上でイエス・ノーを判断しているのです。極稀に振り切って、全くそういうの考えずにズバズバ決断する社長もいますけど(笑)
意思決定を促す側は、百歩譲って仮に自分が描いたデザインが間違えていたとしても、失うものはクライアントと、せいぜい社内の評価・信用ぐらいなものでしょう。
意思決定を促す側が失う可能性のあるものと、意思決定をする側が失う可能性のあるものを比べると、Betするものの重みが全然違うって話です。
コンサルタントがいくら「この社長…ショボいな…」と思うのは勝手ですが、そのショボい社長が下した1つの意思決定は、コンサルタントが提案した机上の空論100本より何百倍も重たいものですから。
そして万が一間違った方向に進んだ場合、意思決定をした人間に求められるのは正しいロジックに基づいて再度意思決定をすることばかりではありません。
場合によっては間違った意思決定を、正しいものに変える必要だってあるのです。
もっと端的に言うと、死物狂いで努力し、結果を以てクロだった意思決定そのものをシロに変えるということです。
コンサルタントには99%出来ない行為ですよね。
経営者と比較してコンサルタントが優秀ではないと言いたいのではない
断っておくと、経営者の方がコンサルタントより優秀ではないと申し上げたいのではありません。コンサルタントが備え持つ能力は経営者の人でも持ってない人の方が多いです。
経営はロジック、感覚どちらでもやれて、結果が全ての世界なので自由度が高いのですが
コンサルタントに感覚で事業のことを語られたら、ビックリしますよね。
ロジカルに考えたり、数値から仮説を立て検証したり予測したりする能力は、あらゆる職業の中でもトップクラスだと思っています。
だからこそ
- 「何でこの提案を飲まないのか、あの社長どうにかしてるぜ」
- 「御社の課題はここです」
- 「あの会社、あの社長イケてないっすね」
なんて発言をしてしまうことが滑稽な訳です。聡明なコンサルタントが。
そんなことを一瞬でも業務の中で思ったり考えたことがあるならば、コンサルタント諸氏におかれましては猛省すべし、と言いたいところです。
ちなみにダンもコンサルタントだった頃は上記の事を考えたことがありました。実際に経営する側になってみて自分が如何に驕り高ぶっていたか、痛感した次第です。
泥臭くfactを積み上げ、クライアントにバリューを提供しようとするコンサルタントの姿勢と、泥臭く事業をdriveし、1円でも多く利益を積み上げながら、顧客に価値を提供する経営者の姿勢は
ベクトルこそ違えど、通ずる部分があると個人的には思っています。
失敗のフルコースだからこそ、ここまでDeNAが大きくなったとも言える
著書の中でここまで壮大に失敗することがあるんだろうか、という程沢山の失敗をしてきた旨が書かれています。
しかし違う見方で考えると、失敗した数だけ学べたからDeNAという偉大かつ巨大な企業が出来上がったとも言える筈です。
それは何故かというと、失敗が致命傷にならないよう失敗した数だけ修正し、一般的に求められる水準や基準にアジャストして何とか生き延びてきたことで
副産物として失敗に対する耐性が強くなり、失敗を恐れないカルチャーが育ったという側面が上げられるからです。
こちらの記事を読んでも、しっかり社員さんにまで「失敗を恐れない」というカルチャーが根付いているのがわかりますね。
失敗を恐れないのは、それを乗り越えられる自信とその向き合い方
ダンは人間万事塞翁が馬という言葉が好きなのですが、成功って本当に素晴らしいことなのか、失敗って本当にダメなことなのか、という考えで結果を見るようにしています。
何故ならば、結果は長い時間軸の中のほんの一部分を切り取って拡大したものにしか過ぎず、そこから更に泊まることなく先に流れていくからです。
過去からの積み上げが結果に現れ、人間はそれに支配されるという考え方も出来ますが、その考え方だと
昨日雨だったから明日だって雨に決まっている、というトンデモ思考になってしまいます。
今この瞬間の失敗が、数年後にあの時失敗してよかったねと笑って言えるようになる為にそこから先気張って修正して、結果が出せるのならば、その瞬間の失敗なぞただのスパイスでしかないでしょう。
逆に短期的に成功してしまったことで気が抜けてしまい、スケールアップ出来る案件が平凡に終わることなんてザラにあります。
成功の裏には失敗が潜んでいるし、失敗の先には成功が待っています。
大事なのは成功や失敗に過度に一喜一憂せず、目の前の課題を絶対に何とかするんだ!という強い気持ちを持ってコツコツ取り組むことではないでしょうか。
そうすることで失敗なんて屁でもなくなりますし、成功しても通過点にしか過ぎないと思えるようになります。
まとめ
不格好経営のレビュー、如何でしたでしょうか。
内容をまるっとネタバレするわけにはいかないので、個人的に読んでいてピンと来た所を掻い摘んで、自分の経験や考えとミックスした上で記事とさせて頂きました。
この本を読んで個人的に学んだことや気付きとしては
- 経営者は最大の加害者。経営者に限らず、自分の人生は自分でdriveする。簡単に環境や人のせいにして逃げない。
- コンサルタントとして積んだ経験は、経営に即アドバンテージになるとは限らない。むしろ足かせになることもある為、その場合は謙虚に「unleaning」作業をすること
- 失敗も成功も表裏一体。一喜一憂せず、本当に目指すべきことは何なのかを見定めること
- 不格好でもいい、頑張ってる姿は業種問わず最高にカッコイイ
という所でしょうか。特にコンサルタントを生業としている人には是非読んで欲しい一冊です。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
泥臭く頑張る皆様を、これからも全力で応援致します。
ダン