アスリートがセカンドキャリアで成功・失敗する理由は?
アスリートのセカンドキャリア、最近では随分耳にするようになりました。
大手人材派遣会社だけでなく、最近はアスリートや大学の体育会に所属する人達向けの就職・転職サービスを行っている企業もあります。
今この記事を見ているアナタも、
アスリートとして第一線を退いたが、セカンドキャリアでも成功したい
アスリートとしてあまり成功しなかったから、セカンドキャリアは絶対に失敗したくない
セカンドキャリアを考えて競技に取り組むべきだろうか?
という思いを漠然と抱えていることと思います。
種目にもよりますが、長くても30代~40代に現役を引退するアスリートが多く、引退してからのセカンドキャリアを何となく考えながら競技に打ち込んでいる人もいるでしょう。
目の前の競技に集中して全力で打ち込んだって必ずやってくるセカンドキャリア。
引退後現役時代以上に成功している元アスリートの方もいれば、引退後どうなっちゃったのか全然わからなくなっちゃう方もいますし、場合によっては飲食店を始めたけど廃業してしまったり、最悪の場合逮捕されたりして、完全にセカンドキャリア失敗、という方もいますよね。
現役アスリート、元アスリートと何名か交流のあるダンですが、彼らの競技への取り組みや言動等を眺めていて
アスリートのセカンドキャリアで成功する傾向、失敗する傾向がボンヤリと見えてきました。
今日はそのあたりを具体的に掘り下げて、読んで下さっているアナタの不安を少しでも解消していきたいと思います。
アスリートはセカンドキャリアで成功しやすい!?
競技人生で得られるものがビジネスでも通用する
実はアスリートが競技人生の中で得られるものって結構沢山あるんですよね。
アスリートの人が競技に打ち込む中で身につける能力で最初に思いつくのは、自分を律する力でしょう。
普段の生活も勿論ですが、試合が近づくと当然夜更かしはしない、身体に悪いものは食べない、競技にマイナスになることはしない…
競技人生の中では当たり前の中でやってきていることかもしれないですが、いざ社会に出てみると自分を律する力が弱い人は沢山います。ダンもその一人だったりしますが(笑)
面倒な仕事でも自分にプラスだと思ったら取り組む、自分にプラスだと思ったら積極的に取り組む、体型維持や仕事のパフォーマンスに影響することはやらない。
こういうことが当たり前に出来ることは、社会人としても大きなアドバンテージです。
自分を客観視し、分析し、長所短所と向き合う力
アスリートが競技人生の中で得られるもう一つの能力は、
自分を客観視し、長所短所と向き合って解決していく能力でしょう。
営業で競合他社とのコンペになった時や、競合他社の営業戦略の分析、動向等を調べたりすることに役立ちますね。
この能力が何故ついているかという話なんですが、
スポーツ自体がそもそも「相対的な競技」であること
その為相手の長所・短所を分析し、その上を行かないと良い結果が出せないことを体感的に知っている
自分の長所を「伸ばす」ことだけでなく、「短所」も克服しないといけないことを知っている
「短所」と向き合い、克服する為にハードなトレーニングを耐えられるだけのメンタリティがある
ということを日々繰り返しているからです。
勿論個人競技・団体競技は違うので一括りには出来ませんが、
個人競技なら部内・クラブ内にいる選手を観察して、自分のどの部分が上で、どの部分が下なのか。
団体競技なら、同じポジションを争うライバルのどの部分が優れていて、どの部分なら勝てる余地があるのか。
場合によっては、手薄なポジションにコンバートして、そこでレギュラーの座を掴み取れないか。
そんなことを身体を動かしながら、日々無意識のうちにやっているのです。
特に競争していく職種・競合が多い業界でのこのような能力は、成果を出す上ではmustな能力だとダンは思っていますが、アスリート以外の人ってどちらかというと先天的な能力に依存せざるを得ないのが現状です。
後天的とはいえ、
周りを俯瞰してみて自分の立ち位置を正確に把握する
現在の立ち位置から、どんな努力をしたら現状を変えられるか、競う相手より上に行くことが出来るか
と言う能力は、ビジネス力を向上させていく上では極めて大切なスキルです。
礼儀・上下関係
ビジネスマナーは社会人の常識だ!と特に新人研修なんかの時に教育担当の方から口酸っぱく言われたことがあるかと思いますが
ビジネスマナーに近い点で礼儀を重んじること、上下関係を重んじることもセカンドキャリアを成功させる上で大切なスキルだと思います。
特に武道なんかは礼節を重んじており、礼に始まり礼に終わると言われるほどですが
武道以外の競技でも自分が使うグラウンドに向かって挨拶したり、練習に付き合ってくれた相手に対して練習終了後にお礼を言ったり等、日常的に礼節を用いて行動するシーンは多いでしょう。
また指導者の方や先輩・後輩と接する機会も日常的にありますから、会社という組織で仕事をすることと似たような経験を日常的に行っていることになります。
指導者の人には生意気な口の聞き方をしたり無礼な態度を取ったらどうなるかわかりますよね。
昔のような部活内でのガチガチな上下関係や、指導者の理不尽な鉄拳制裁等は随分少なくなったように感じますが、それでも部内の規律を守ったり、目上の人への礼儀、組織の一員として過ごすことは社会生活で過ごす上で大きなアドバンテージになるかと思います。
桑田さん、清原さんを排出した高校野球の名門、PL学園のOBの方がやられているyoutubeチャンネルを見ても未だに先輩には直立不動であったり、敬意を払って接する姿は、このご時世やり過ぎと言われることもあるでしょうが、やはり印象は良いと思います。
アスリートがセカンドキャリアで成功するコツ
ここからは実際にアスリートがセカンドキャリアで成功を収められるか否かについて書いていきます。
一旦現役時代の結果や栄光から離れる
とことん現役時代の実績を極めようと思ったのであれば、相応の努力をし、色々なことを犠牲にしてきたことと思います。それを引き換えに得た実績、結果は本当に素晴らしいものでしょう。
ただしそれはあくまでその業界、その競技だけの話。他の業界に移ったら、アナタは一度新人としてリセットされ、そこから再び確実に積み上げていくステージが待っています。
勿論これまでのようにチヤホヤもされません。周りを納得させるだけの結果を残さない限りは。
それに過去の栄光を引っ提げて、トンチンカンなことを言う人がいたらうざいだけですよね?
例えば、違う競技で実績を残した人がいきなり自分の領域に入ってきて
めちゃくちゃ上から目線でモノを申されたらあんまり良い気はしないですよね。
一度過去の栄光や実績については自分の心の中にしまっておいて、積み上げていく過程で苦しくなったらそっと取り出して、もう一度自信を復活させましょう。
特定の分野で成功出来た人は、その成功パターンをキチンと身体に染み付けることが出来れば、他の分野で成功出来る可能性も高いです。他の分野でも成功したら、自分からアピールしなくても必ず人がよってきてくれます。
アナタなら大丈夫。華やかな成果が出た時のように輝けることをイメージしてコツコツ取り組んでいきましょう。
現役中から何となくでも良いので引退後の生活をイメージしておくこと
競技中に何となく自分の行く末がわかったりする時はありますよね。
自分の能力、体力、モチベーション、所属先から必要とされているか、市場価値などなど…
いつかは終わりが来る時の為に今何をしておくか、ということはとても大切です。
引退後の収入は?やりたい仕事は?自分の能力で不足はないか?
など、漠然としていても良いのである程度の方向性は見出しておきましょう。
いざセカンドキャリアスタート、となったとしても誰も助けてくれず、自分で道を切り開いていくことになります。
事務職?接客?飲食?独立?指導者?
色々な選択肢があるかと思いますが、その中で自分が進んでいくべき道はハッキリと見定めておきましょう。
今の時点でなかなか方向性が見えない、という場合は、空いた時間を利用して今後について相談してみると良いかもしれません。
ちなみにサッカー日本代表主将を務める吉田麻也選手は、まだ名古屋グランパスに所属する新人時代だった頃先輩に連れられて異業種交流会に参加し、経営者やビジネスパーソンと名刺交換をしたりなどして見聞を広めていたそうです。
まだまだ現役で頑張る吉田選手ですが、プロになってすぐ、それも20歳前後に、先輩に連れられてとはいえそのような場に足を運んでいたということは驚きですね。
言うまでもなく、吉田選手は現役を引退されたセカンドキャリアでもほぼ間違いなく成功を収められるとダンは思います。
自分の中の強みを理解し、それを活かした仕事をする
上記と少し重複しますが、自分の強みを活かせるセカンドキャリアを選択し、進めていきましょう。
これはあくまでダンの主観ですが
テニスや卓球、陸上競技のような個人競技を突き詰めて来た人は、比較的専門職、いわゆる手に職系で花開くことが多いと感じています。
ダンのバックグラウンドは卓球ですが、卓球のセカンドキャリアで成功した方として真っ先に挙がるのが
糀谷先生でしょう。
今では滋賀県で社労士として働く糀谷先生ですが、現役時代は全日本で準優勝のトップアスリートの方です。
上記で話をしたように、やはり専門職で大きく花開き、現役時代と同様にご活躍されていますね。
またサッカーや野球、ラグビー等チームプレーを重んじて活動されてきた方は、特に営業職等で活躍されることが多いように思います。
元サッカー選手で、現在はアサヒビールの販売職で課長代理としてご活躍される千代反田充さんも、セカンドキャリアで成功した方と言えるでしょう。
もともとは日本代表候補にも名が挙がるような有名な選手でした。
千代反田さん以外にも営業職として活躍されているアスリートは多く、元プロ野球のGG佐藤さん等も有名ですね。
保険会社の営業職で上位にランクインされる方のキャリアを紐解いていくと、
学生時代体育会に属してひたすら毎日練習に励んでいた、という話もよく聞きます。
数字という目に見える目標と、それを達成する為に全力で取り組むというプロセスはアスリートの方と相性が良いのかもしれません。
勿論、個人競技の方でも営業職として花開く方もいますし、団体競技の方が専門職として花開くことも多くあります。
一度整理して、次のキャリアを考えてみましょう。
経験を活かす為に「言語化の習慣づけ・練習」現役時代に築いた人脈も上手に活用
セカンドキャリアとして指導者・後進の育成や所属しているクラブチームで裏方として働くひともいるでしょう。
特に指導に関する仕事につく際は、どんな競技でもそうですが
「一つ一つをキチンと言語化する」
能力が大切です。
例えば、サッカーを全然知らない人にボールを止めて蹴る指導をする時に
ボールがこう来たら足でピタッと止めてインサイドでドーンだ
と言われても、聞いている人からしたら「?」しか浮かびませんよね。
アスリートとしては一流だったとしても、これでは指導者としては二流以下になってしまいます。
自分がこれまで実際に身体を動かして来て得た体験・経験をどう人に伝え、そのとおりに実践して貰うのか。
それを実現する為には、自分がやってきたことをどう言語化し、わかりやすい表現で相手に伝えるのかを訓練する必要があります。
上記の場合だと、一例ですが
ボールが来たらしっかり右足の内側で止めてみよう。
ボールが足に当たる瞬間に20センチくらい足を引いて、自分が立っている所から30センチくらいの所で止めることを目指してやってみよう。
ボールをしっかり止めたら、今度はまた右足の内側を使って相手に蹴ってみよう。
軸足の左足をしっかり相手に向け、右足のくるぶしを、ボールの中心にぶつけるイメージで蹴ってみよう。
狙うのは相手の利き足ね。相手がトラップしやすいように蹴ってあげよう。
って言われたら…どうですか?前者より全然イメージしやすくないですか?
伝え方に関する本でもいいでしょうし、実際に友人等に説明の練習をしてみて、フィードバックを貰うのもよいでしょう。
また、現役時代に接してきた同僚や指導者・マネジャー、クラブスタッフは
指導者やクラブスタッフとして働く際にキャリア形成の上でも大切な財産となります。
勿論おんぶにだっこは論外ですが、新しいキャリアを形成していく上で彼らの人脈を良い意味で利用していくと、そのキャリアと繋がりのある人がいる可能性があります。
同じ大学のOBが代表をしていて指導者と繋がりがあったり、先輩の勤めている会社で人を募集していたり…
うまく言いくるめられてやりたくもない仕事を引き受けてしまうのはダメですが、自発的に自分のキャリアを形成していく上で必要とあれば積極的にコミュニケーションを取ってみましょう。
人のご縁は馬鹿に出来ないこともあり、ダンも恩師からクライアントを紹介して貰ったり、全く面識がないのに同じ競技者と言うだけで意気投合して契約が決まったことがあります。
今この瞬間に出会っている仲間や同僚を大切にすることは、自分の今後のキャリア形成にアドバンテージとして働くことは間違いないです。大切にしましょうね。
セカンドキャリアに失敗しがちな元アスリートの傾向
ここまでは成功するアスリートの特徴について書きましたが、次は結果的に失敗するアスリートの特徴です。
現役時代の感覚が抜けずプライドを捨てられない
成功する傾向の人と真逆ですね。いつまでも過去の栄光にすがって、チヤホヤされて当たり前だと思っている人は、当たり前ですが次のキャリアで成功するのは難しいでしょう。
現役時代の実績や肩書が外れた時に、この人は何が出来るんだろう?ということを、外野は冷静に見つめています。
その時に居丈高な態度で接してきたら、誰だって協力しようとは思いませんよね。
引退を決め、次の道に進むと決めた時点で一旦キャリアはリセットされ、1年生からやり直しです。勿論自分の努力と、結果でどんどん上のステージに進んでいくことは可能です。
また新しくスタートするんだという気持ちで、謙虚にとりくみましょう。そうしないとセカンドキャリアでは思うような結果が出せず、結果として苦しんでしまうことになります。
引退して始めて自分のキャリアについて見つめる等、計画性がない
引退するまでひたすら競技に熱中…と書くと聞こえはいいのですが、客観的に見て「ダサい」の一言です。
いつか終わることがわかっていながら、現実を直視していなかったという点は結構なマイナスポイントです。
また、とりあえずやりたいこともわからないから当時貰った契約金でとりあえず飲食店を…というようなセカンドキャリアを描く元プロ選手もいたりしますが、ハッキリ言って最悪のチョイスです。
自分で稼いだお金だから自由なのですが、ろくずっぽ飲食店の勉強もせず自分の名前を商品代わりにして営業している飲食店は、最初こそ話題性で集客出来るものの、現役時代に負けないくらいの努力をしないと成功はしません。
元プロ野球選手で、現在人気讃岐うどんのお店「條辺」を経営する條辺剛さんも、お店を出す前に本場讃岐でうどんの修行をしてきたと言います。
成功するにはやはりそれくらいの下積みが必要で、思いつきでやれる程どの業界も甘くない、という話ですね。
新しく学ぶ、という意識が薄い
一般的な転職と通ずる部分でもありますが、第一線で相当なプレッシャーの中でやってきたことについては大変凄いことだと思います。
しかし違う業界に行ったら違う業界のことを謙虚に学ぶことはとても大切で、今までと同じ価値観で仕事をしても成功することは難しく、定期的に知識や価値観のアップデートは必要です。
ここを疎かにして、今までと同じ感覚でセカンドキャリアを進めても難しいでしょう。
過去セカンドキャリアで挫折しながら、先輩のアドバイスを胸に復活した元アスリートの方がいます。
バッティングピッチャー、用具係、そして指導者…
自分がやってきた業界を軸に、様々な職種を経験されましたが、紆余曲折あり上手くいかない時期もあったようです。
そこで、先輩からのアドバイスを素直に聞き、成果を出されたようですね。
アスリートの世界同様、やはり他人のアドバイスは、一度は耳を傾けた方が良いですね。そこで取り入れる、取り入れないという選択をするだけですから。
まとめ
アスリートのセカンドキャリアについて書かせて頂きました。
やはり大切なのは、
自分の輝かしいキャリアは一旦リセットし、謙虚な気持ちで積み上げること
競技人生同様、自分の強みを活かせる所で勝負すること
現役時代から大まかで良いのでセカンドキャリアについて考えておくこと
現役時代お世話になった方の力も上手く借りること
あたりだと思っていますが、今日記事を読んで一つだけ覚えておいて欲しいのは
という所ですかね。
ビジネスマナーもない、未経験…等色々なネガティブ要素が頭の中に浮かぶかもしれませんが
そんなものは後天的な努力で何とでもなりますし、そういう苦しい状況から逃げずに向き合ってここまでの成果を出されてきた方ですから。
自分自身も弱小アスリートではありましたが、やはりトップアスリートのストイックさには心の底からリスペクトしていますし、今は完全に競技を離れてビジネスにドップリ漬かっていますが
高校野球や高校サッカーみたいなユースの子達が頑張る姿を見るのは大好きですし、企業スポーツ、プロの世界、マイナースポーツ問わず
一生懸命やっている方は本当に輝いているなと思います。
だからこそ、輝きは一時的なもので終わらせて欲しくないですし、現役を退かれた後も別の形で輝き続けて欲しいなと心の底から願っています。
これからも頑張るアナタを応援し続けます。
ダン