Gマーク取得のメリット・デメリットを元運送事業者専門コンサルタントが語る
Gマークの取得を考えているんだけど、どんなメリットがあるの?
恐らくこれを読んでいるアナタは、Gマークの取得を目指している、Gマークの取得を命じられた、Gマークについてクライアントから相談された、等の事情があると思います。
そこで今回は運送事業専門コンサルタントとして5年以上働き、のべ10社以上のGマーク申請・更新のお手伝いをさせて頂いた筆者がGマークを取得することのメリット、デメリットについて記載致します。
今回の記事を読んで頂くことで
Gマークというものがよく理解出来る
Gマークを取得するメリットが理解出来る
Gマークを取得するまで、取得してからのデメリットが理解出来る
ようになります。
それでは最後までどうぞゆっくりとお読み下さい。
Gマークってそもそも何?
正式な名称は「貨物自動車運送事業安全性評価事業」
Gマークという名前が独り歩きしていますが、正式な名称は「貨物自動車運送事業安全性評価事業」と呼ばれています。
全日本トラック協会が事業所の安全や法令遵守の状況について安全性評価委員会で評価し、一定の点数以上を獲得すると認定される認定制度となります。
もともとの目的は、「利用者がより安全な運送事業者を選択することが出来る環境を整備すること」からスタートして、平成15年(2003年)の7月からスタートしました。
2023年には開始から20年を迎える、歴史ある認定制度と言えるでしょう。
認定をされると、こんなステッカーを貰うことが出来、トラックの観音の部分に貼ることが出来ます。
認定されたらそれでおしまいではなく、認定されてから2年後に1度目の更新、更新から3年後に2度目の更新、以後4年毎に更新という形になります。
2022年3月末現在で認定された安全性優良事業所数は約28,000で、全事業所数の約32%にあたります。大体3事業所のうち1事業所は認定されているような状況ですね。
Gマークを取得するにはどうしたら良いの?
Gマークの取得の仕方ですが、先程少しご紹介したように定められている項目に対し、一定の点数以上を取得することで認定して貰うことが出来ます。
具体的には大きく3つの項目があり、
①安全性に対する法令の遵守状況(40点満点、基準点32点以上)
②事故や違反の状況(40点満点、基準点 21点以上)
③安全性に対する取組の積極性(20点満点、基準点12点以上)
となっており、
3項目全てで基準点をクリア
かつ100点満点中80点以上取得していること
この2点を満たすことで認定して貰うことが出来ます。
とは言え実際は項目①は各都道府県のトラック協会が実施している定期巡回指導の点数がベースになり、②は過去3年間に重大事故や行政処分がないかトラック協会にて調べますので、
実際に新しく作成しないといけない書類は主に③が中心となります。
勿論①も巡回指導の際に必要となります。
Gマークを取得することのメリット
ここからは、実際にGマークを取得することのメリットについてご紹介致します。
一定の安全に関する取り組みを担保していると荷主や同業に証明出来る
事業所内における法令遵守・安全に関する取り組みについては可視化が難しい為、認定を受けることによって一定の法令遵守・安全に関する取り組みを事業所が行っていると判断されます。
特に法令遵守や安全活動に厳しい荷主の場合、Gマークを保有していることでそれを荷主に大きくアピールすることが出来ます。
IT点呼の導入・点呼の優遇
個人的にGマーク取得による一番大きなメリットは、IT点呼が導入出来るようになることだと思います。
例えばA営業所とB営業所と2つ事業所があり、B営業所の点呼実施者が少なく、時間帯によって点呼が実施出来ないような場合は
A営業所とB営業所をITで繋ぎ、A営業所の点呼実施者が点呼を行うことで点呼として認められたり、
出先のドライバーに対しスマホ等の通信機器を使用して点呼が可能となったりします。
これにより多忙を極める管理職の点呼業務に対する負担を大幅に軽減することが出来、他業務に割く時間を確保出来ますし
点呼業務をIT機器を使うことで統一し、点呼業務の質の標準化が可能になります。
以下イメージ図です。
特殊車両通行における許可の有効期間延長
特殊車両(トレーラーをイメージするとわかりやすいかもしれません)許可の有効期間が通常最長で2年間の所を、Gマークを取得することで最長4年間まで延長可能になります。
※超重量・超寸法の車両(長さが17m を超えるセミトレーラーなど)については1年から2年へ延長されます。
許可の期限が延びることで再度許可申請をする手間も省けますし、通常の業務が圧縮出来るのは大きなメリットですね。
特に何十台とトレーラーを転がしている企業は大きなインセンティブとなりそうです。
補助金の優遇措置
Gマークを取得することで、各種補助金の優遇措置が得られます。
①ドライバーへの安全教育訓練促進助成制度→特別研修への受講料助成金が、7割から全額助成になります。特に初任運転者等に手厚い教育を実施したい場合、大きなインセンティブになりますね。
②安全装置等導入促進助成事業→IT機器を活用した遠隔地での点呼の際使用する携帯型アルコール検知器1台につき、半額または上限2万円の助成となります。合格した折に導入する設備の補助もして貰えるので、IT実施点呼導入へのハードルが大きく下がりますね。
③経営診断受診促進助成事業→経営診断助成金として8万円→10万円まで増額、経営改善相談助成金が2万円→3万円まで増額となります。安全性は勿論、会社の経営状況に対するコンサルタントの助言までサポート頂けるので、より有益なプランを選ぶことが出来るようになります。
一部損害保険会社で保険料優遇
全ての損害保険会社に当てはまる訳ではありませんが、
あいおいニッセイ同和損保 「運送業総合保険」
損害保険ジャパン
神奈川県自動車交通共済協同組合
四国交通共済協同組合
にて保険料の優遇を受けることが出来ます。
運送事業という仕事柄車両の事故、製品の事故等何かと事故のリスクを抱えている為優遇して貰えるのはとても嬉しいですね。
ちなみに事故が少ないと最大で70~75%割引まで持っていくことが可能です。
保険料の圧縮はコストですから、会社の経営に直結するものとなります。
日頃から事故のない環境作りも、Gマーク取得と併せて進めていきたい所ですね。
長く続けることで安全性優良事業所として表彰される
連続して10年以上等Gマークの認定を長期に渡り継続すると、運輸局や運輸支局の局長表彰を受けることがあります。
更に場合によっては管轄の警察署の署長さんからも表彰されるケースがあり、こちらについてはダンが担当しているお客様で2社事例がありました。
あくまで表彰は勲章の類である為、表彰されたからと即会社に何かが起こる訳ではありませんが
公的な機関からの表彰は各所で大きく評価された証なので様々な所でアピールが可能ですし、世の中の運送事業者で運輸局から表彰された事業者は殆どありませんので、大きな差別化となるでしょう。
Gマークを取得することのデメリット
ここまではGマークを取得することのメリットを紹介しましたが、一方でデメリットも確実に存在しますので併せて紹介します。
申請作業のボリュームが多い為、抱えている業務次第では重荷に
Gマーク取得のデメリットでの最たるものと言えば、申請作業のボリュームが多いということに尽きるでしょう。
点呼記録や乗務員台帳の整理等、大手であれば当たり前のようにやれているようなことでさえ
限られた管理職で仕事を回し、日々激務に追われているような企業からすると大変なボリュームですよね。
Gマークの申請・更新の受付は7月に行われることがわかっている為、事前にちょっとずつやっていけばいいじゃん!
と言う話なんですが、それすらどうしても億劫ですよね。
ダンが仕事をしていた時も、手が早いお客さんでも4月からすたーとでしたし、遅いお客さんだと6月中旬に急に泣きつかれて、慌てて一緒に資料揃えたりなんてこともよくありました(笑)
もー!Gマーク取る目的は帳簿揃えることじゃないから!きちんと事故が起きないよう安全に配慮した活動が出来る仕組みを作ることだから!
ってことあるごとにお小言言ってましたが、それが難しいくらい日々大変な業務をやられていることをわかっていたので、なかなかバランスが難しい所でしたね。
特に食品系は6月~9月くらいまでは飲料が増えたりで大変になることがあるのですが、その仕事こなしながらGマークの帳簿を揃えてる管理者さんには本当に頭が下がる思いでした。
Gマークの準備は少しずつで良いので、本当に早めにスタートすることを強く強くオススメします。
理想は4月上旬から。遅くともGW明けくらいから少しずつ着手したいですね。
また帳簿の整理だけでなく、運行管理者の講習やドライバーの適性診断等も重なるので
これは前年のうちから少しずつ進めておいて、4月の時点では完了、または曜日確定させておくくらいのスケジュール感で進めることをオススメします。土壇場になって慌てて講習に申し込んでも一杯だった、ということはGマークあるあるの一つです。
一部のドライバーからの安全活動に対する反発
事故が起きないよう配慮した活動を社内で行うことはメリットしかないわけですが、それはあくまで理論上の話です。
定期的な安全活動を行い、記録として残す必要がありますし、計画の作成、掲示も必要。
そして悩んでいる事業者が多い、12項目の実施等現場のドライバーにも協力して貰うシーンが幾つかある訳ですが
一部のドライバーから反発されるケースは非常に多いです。
何で休みの日にそんな活動やらないといけねーんだ!
その活動に金は出るのか!?
安全活動って言ったって俺事故したことねえし!事故したやつだけやれよ!
なんて言われる間はまだ可愛い方で、場合によってはドライバー同士で徒党を組んでボイコットされたり、
最悪の場合はこんなくだらないことやってらんねえ!と退職されるケースもありえます。
(過去ダンが担当していたクライアントさんでも実際にありました)
そのドライバーさんを説得したり、活動に参加させたりすることはシンプルに手間です。
日頃からドライバーと良好な人間関係を築いていれば傷は小さいかもしれませんが、普段からあまり良好でないとそのようなリスクを抱える可能性があります。
点呼の際や業務終了後等、ドライバーの人とは出来るだけコミュニケーションを取り、ある程度良好な関係を築いておきましょう。
取得することが以前ほどのアドバンテージではなく、決定的な差別化にはならない
Gマークの取得は確かにインセンティブも多く、保険料やIT点呼等でのメリットは大きいのですが
Gマークを持っていることで仕事が溢れるように貰えるかというと、そんなことはほぼありません。
何故ならば先述した通りGマークの取得率は現在で約32%なので、3事業所に1事業所はGマークを持っている計算になります。
Gマークを持っているからここ信頼出来るな…仕事を振ろう…
なんてことになる可能性は99%ないです。
これは認定制度が長い年月をかけて、「持っていたら有利」という立ち位置から「運送業界で生き残っていく為には持っていて当たり前」という立ち位置に変わったことも大きいですね。
審査は基本的に書面・帳簿類の確認がメイン。ということは…
あまり大きな声では言えないことのですが、Gマーク認定をして貰う上で協会が判断する材料は現地審査でもなければ事実確認でもないわけで、
何かと言うと帳簿・書面のみなのです。
と言うことは忖度せずに言うと「帳簿や書面で鉛筆を舐められる所は舐めても認定を受けられる」資格であり、
教育なんてしてないのに「教育をした」という書面を作れば、それで「教育をしている事業者」という認定を受けられることが出来ます。
このあたりはもう性善説の上に成り立っているので信じるしかないのですが、それでも実際鉛筆を舐めている事業者は相当数いるとダンは考えます。
ですが、Gマークを取得する本来の目的って書面や帳簿を整えることなんでしょうか?
本来は重大事故がないよう従業員に教育をしたり、安全活動が行える仕組みを整えて適切に運用が出来ている事業者を厳選し、地道にコツコツやっている所が報われるような制度にするべきです。
書面重視の一点だけは、ダンももっと協会に知恵を出してくれ、と言いたい所ですね。
まとめ
Gマークの成り立ちについて、Gマーク取得のメリット・デメリットについて今回紹介させて頂きました。
端的に言うと、Gマークは
昔と比較しても取得している事業者が多く、もはや「持っていて当たり前の資格」
IT点呼や保険料の割引等、実際取得することのインセンティブも大きい
ただし帳簿の作成や整理等タスクが多く、場合によっては過度な負担となる為早めに着手をしよう
Gマーク取得は目的でなく手段、安全活動を自社で行える仕組みを作り、運用することが本当の目的
となります。
少しずつで良いので、今からGマークに必要な書類を整えて行って下さいね。
また書類を集めていく上で実際にどんな書類が必要なのかわからない…となった時は、県のトラック協会の適正課に問い合わせると教えて貰えますので、行き詰まった時は気軽にお問い合わせしてみましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
日々大変な業務をこなす運送業界で働かれている皆さんを、これからも応援します。
ダン