堀口一史座八段 病気を言い訳にせず盤上で人間性を語る哲学の棋士
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先日の順位戦C級2組にて佐藤紳哉七段を破り、八段昇段を決めた堀口一史座先生。
2004年の4月に七段に昇段してから、12月15日に八段に昇段するまでに約18年半の歳月をかけただけに
感慨深い所もあるでしょう。
お相手が棋界屈指のエンターテイナー、佐藤紳哉先生であることにちょっと笑いそうになりました(笑)
しかし堀口一史座先生が八段に昇段されたことについては本当に胸が熱くなる思いで
堀口一史座先生のこれまでの棋士人生を振り返ると、応援する一択でしかないと思う訳です。
そこで本日は、堀口一史座先生のこれまでの棋士人生を振り返りながら
堀口一史座と言う棋士について知って頂ければ幸いです。
それではどうぞ。
堀口一史座 生い立ち~プロになるまで
生い立ち~奨励会に入るまで
堀口一史座先生は1975年2月28日に東京都で生まれます。
将棋を始められたのは10歳の頃で、お母さまの実家にて将棋盤があったのを見たことから始まります。
よくある将棋との出会いだとは思いますが、藤井聡太先生や羽生善治先生のように
小学校低学年の頃から将棋を始められた訳ではなく、偶然出会った、と言うところが
堀口一史座先生らしいなと思ってしまいますね。
その後着実に力を付け、1988年、堀口先生が13歳の時伊藤果七段を師匠に奨励会に入会致します。
奨励会入会~プロになるまで
奨励会入会後、堀口一史座先生は順調に力をつけられ
入会1年間で6級から3級に昇段致します。
6連勝で5級、4級、3級にそれぞれ昇段すると
そこから11勝4敗の成績で、平成元年6月に2級に昇段致します。この時堀口一史座先生、14歳。
そこから1年半程足踏み状態が続きますが平成2年の12月、11勝4敗で1級昇段を決めると
翌平成3年の6月、14勝5敗で初段に昇段。
この時堀口一史座先生16歳。
平成4年の6月、12勝4敗で二段に昇段すると
翌平成5年の1月、なんと16勝6敗という成績で一期で二段を抜け、三段に昇段致します。
この時堀口一史座先生17歳。いよいよプロまであと一歩の3段リーグに挑戦します。
三段リーグの同世代は強敵だらけ。
無事三段リーグに昇段する堀口一史座先生ですが、当時の三段リーグには現在も活躍する棋士の先生方はじめ
錚々たる顔ぶれです。
以下
などなど、現在でも第一線で活躍している先生方ばかりですね。
そして堀口一史座先生に負けないくらい個性的な先生方ばかり(笑)
この世代は個性的で実力のある棋士の先生方がプロになられた世代ということだったのでしょうか。
この実力者が集まる三段リーグで堀口一史座先生は通算6期在籍し、ライバル達と鎬を削ることになります。
一期目 9勝9敗
二期目 10勝8敗
三期目 11勝7敗
四期目 9勝9敗
五期目 12勝6敗(次点)
六期目 14勝4敗(昇段)
特に五期目は昇段、そしてプロ棋士まであと一歩の次点という悔しい結果となりました
(昇段したのは松本佳介先生、田村康介先生で、田村先生とは同じ12勝6敗)
六期目は雪辱を果たし、14勝4敗で1位で昇段を決めます(同期は中座真先生)
ちなみに三段リーグを14勝4敗で抜けることがどれだけ凄いかという話ですが
今や向かう所敵なしの藤井聡太先生でさえ、三段リーグを突破した時の成績は13勝5敗。
全勝で抜けた棋士はおらず、歴代最高成績は16勝2敗で
藤原直哉先生
小倉久史先生
大平武洋先生
片上大輔先生
青嶋未来先生
の5名しか達成していない過酷なリーグです。
このリーグを14勝4敗で突破した堀口一史座先生がどれだけ凄いのかは説明するまでもないでしょう。
プロ昇段を決めてから祝賀会を欠席。理由は堀口一史座らしい…
プロに昇段すると、一般的には奨励会幹事の方が主催する
昇段祝賀会が開かれるのが通例ですが、これを堀口一史座先生は固辞します。
理由として
ということのようです。
このことは、奨励会の現実を描いた「将棋の子」の中に詳細が描かれています。
堀口一史座先生の温かい人間性が垣間見えるエピソードですね。
ちなみにこれを決意されたのは昇段が決まってからではなく、五期目で次点を取った時のようです。
堀口一史座先生の中で昇段していく棋士を見て、思う所があったのかもしれませんね。
堀口一史座 プロ棋士~体調不良による休場、復活まで
順位戦
プロになってからの順位戦ではC2級を4期かけて昇級。
C1級を3年かけて昇級します。
そしてB2級をわずか1期で昇級し、
鬼の住処と言われるB1級に6期在籍した、実力派の棋士の一人です。
トーナメント・オープン大会
また、この期間中と前後して
1998年のNHK杯では決勝まで進出し、羽生善治先生に惜敗したものの見事準優勝に輝き
1999年の新人王戦でも、藤井システムで有名な藤井猛先生と決勝を争い、準優勝に輝きます。
そして2000年の銀河戦では
米永邦雄先生、島朗先生、佐藤康光先生、森内俊之先生ら強豪を破り決勝に進出し、
ここでも羽生先生に敗れたものの準優勝という結果に輝いています。
そしてオープン大会で念願の優勝
そして堀口一史座先生が一番輝いた瞬間は間違いなく朝日オープン将棋選手権の初代王座に輝いた瞬間でしょう。
現在の朝日杯の前身にあたるこの大会で堀口一史座先生は勝ち進み、決勝で藤井聡太先生の師匠である
杉本昌隆先生を3勝1敗で破り、初代王座に輝きます。
杉本先生と堀口一史座先生が対局している映像がありました。
NHK杯の時の映像ですので少し古いのですが、お二人とも凄く若いですね!
実は最長長考記録の持ち主
並みいる強豪の先生方を押しのけ、優勝したことで期待の若手棋士として注目された堀口一史座先生。
その後B1に上り詰め、A級棋士の座を虎視眈々と狙います。
2005年の青野輝市先生との対局の際の56手目、大長考の末に指した5時間24分という記録については、
現在も長考記録として残っています。
堀口一史座先生はこれに対し、気力が充実したからこそ出来たことと語っています。
1手に五時間も考えることが出来るのは、確かにそれだけ盤面に集中していたということなのでしょうね。
長い病との闘いが始まった
その後B2級に降級し、B1復帰を目指していた最中、堀口一史座先生を病が襲います。
2013年のB2リーグ2回戦以降、体調不良による休場以降、成績が下降していくのです。
堀口一史座 病気は精神的なもの?藤井聡太戦での寄行
精神的な疾患の可能性がある
特に堀口先生の一種の寄行が取り上げられたのは、藤井聡太先生との順位戦の際の映像でしょう。
突然寝転んだり、酔拳のような構えを見せたり…(映像はあるのですが、堀口一史座先生の名誉の為記載しません)
将棋そのものも47手、午前中にて決着と順位戦では珍しい結果に終わりました。
この部分だけを切り取って見る限りだと、精神的な疾患特有の症状に見えなくもない為
精神的な疾患を患っているのではないか、という声もあちこちから聞こえてきます。
休場させろ、連盟は何しているという声に一言モノ申したい
そんな状態で対局をさせるな、連盟が止めて治療に専念させろという
かなり厳しい声がインターネット上でも聞かれます。
気持ちは理解出来るのですが、個人的な意見を言わせて頂くならば
堀口一史座先生が辛い状態であったとしても、堀口先生から休みたいと言わない限り
堀口一史座先生から将棋を取り上げることには反対です。
何故なら、将棋が拠り所になっている可能性もあるから
堀口一史座先生は「将棋には人間の内面が出る」と折を見て話されています。
特に追い詰められたような状況下では、「指し手の内面性が必ず盤面に出る」ということを仰られており
将棋をただのゲームと割り切らず、その人の生き様という括りで見ている為です。
その内面性を磨く為に哲学書を読む等、己の内面と向き合い、そして盤面にも向き合ってきた堀口一史座先生です。
己の人間性を将棋というゲームを通じて追及したが故に、
心を病んでしまった可能性だってあります。
そしてそれがもし事実なのだとしたら、決して心が弱いからではなく
真摯に将棋・そして己の内面と向き合ったが故の代償とも考えられ、
堀口一史座先生が強く己と向き合えるだけの証左でもあると考えられます。
一方的にそれらをこちらの都合で奪うことは、堀口一史座先生に対して極めて重い仕打ちだと思います。
堀口一史座自身が休場を口に出さないのは、何かを得ようとしているからでは
実際にあと1勝で八段に昇段、ということもあったのかもしれませんが
病を抱えている可能性が高い今もなお盤面に向きあっていらっしゃるのは
それ以上に大切な何かを得ようとする一種の本能のようなものなのかもしれません。
おそらく常識で考えれば完治、寛解するまで治療に専念するべきなのでしょうが
プロ棋士にはそれが当てはまらない場合もあると考えています。
つい、故村山聖先生とダブって見えてしまうのです。
このような状況の中、堀口一史座先生はどんな将棋の真理に辿り着こうとしているのか。
ファンとしては休んで欲しい気持ちと、それでも前に進んで欲しい気持ちと半々で本当に複雑です。
また、プロ棋士の山本博志先生も堀口一史座先生に対しこんなコメントを残されています。
堀口一史座先生が奨励会員の方にも分け隔てなく接していらっしゃった様子がうかがえますね。
とはいえ、後進の為にも連盟は何か規定を作って欲しい
堀口一史座先生に限った話ではありませんが、人の健康に関する休場に関しては
何か別の規定を連盟で作って欲しい、と個人的には考えています。
長い人生の中で体調を崩すことは当然考えられますし、特に大病を患った場合等は
将棋の棋力低下とは因果関係もないのに降級させられるのはやはりフェアではないと思います。
女流棋士の中でも、里見香奈先生が体調不良により休場されたことがありました。
人生100年と呼ばれる時代、棋士としての寿命を伸ばす為にも
順位戦やトーナメントはやはり健康も考慮した仕組みになって欲しいとは思います。
健康管理も実力のうちというのは一理あるのですが、
これからの時代少しずつそのような考えは通用しなくなっていくと考えています。
まとめ
堀口一史座先生についてのご紹介如何だったでしょうか。
まずはどんな状態であれ八段まで昇段されたことは、ファンとしてとても嬉しく思いますし
また以前のような鋭い将棋が復活し、トーナメント等で勝ち上がってくれる姿を楽しみにしています。
また精神の疾患を患われているようであれば、一日も早い回復と
元気な状態で私達の前に現れてくれることを願わずにはいられません。
これからも堀口一史座先生をずっと応援し続けます。
ダン
コメント
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[…] 堀口一史座先生や、中座真先生のように病を患われていてもそれを言い訳にせず、 […]