千田翔太七段 反則負けは高い集中力ゆえ 藤井聡太竜王との関係
千田翔太先生と言えば、将棋ファンの方からすると今後タイトル戦線に名乗り出てきてもおかしくない
有望な若手棋士の一人として有名ですよね。
ですが、つい先日の順位戦B級1組、近藤誠也先生との対局にて、
初手で手番を間違えて指したことによる反則負けにより将棋ファン以外の方にも大きな話題を提供することとなりました。
将棋を知らない人からすると何やってるの~!って感じられるかと思いますが
将棋ファンからすると勝負の為極限まで集中している先生方ですから、
このようなことが起きても別に不思議ではないよな、と感じられたことでしょう。
そこで今回は良くも悪くも時の人となった千田翔太先生のご紹介をしたいと思います。
生い立ち~奨励会入会~プロになるまで
将棋を始めたのは5歳の時
千田翔太先生は1994年の4月10日、大阪府の箕面市にて誕生します。
将棋を始めたきっかけは5歳の時。
近所の小学生の方から手ほどきを受けたことで将棋に興味を持ち、将棋を始めます。
近所の知り合いや友人に将棋を教えて貰ったパターンの先生で有名な方は
羽生善治先生なのですが、千田先生もそのパターンということになりますね。
奨励会に入会。師匠は森信雄先生
その後着実に力をつけられ、2006年、千田先生が12歳の時に奨励会に入会されます。
師匠は森信雄先生で、関西では井上慶太先生と並ぶ有名な師匠。
森一門という言葉がある程有名で、門下生には故村山聖先生をはじめ
山崎隆之先生、糸谷哲郎先生、室谷由紀先生等実力派の先生方がいらっしゃいます。
12歳で奨励会に入った千田先生は、入会1年で6級から4級に
そして2年目で4級から1級へと着実に、そして踊るべきスピードで昇級していきます。
しかし1級に昇級してからは足踏みが続き、1級から初段へ昇段するまで約1年要しています。
それでも中学の時点で初段ですから、かなりの速度なんですけどね。
その後も順調に昇段し、中学卒業と同時に三段へ昇段。
プロ棋士になる為の最後のハードル、三段リーグへ参戦します。
三段リーグ~プロ棋士へ
三段リーグには通算6期在籍し、6期目の2012年後期
15勝3敗の成績で四段(プロ)に昇段しています。
昇段した際は谷合先生、黒沢先生、池永先生、戸成先生、青嶋先生と言った
実力棋士の中から勝ち上がって昇段を決めていますし
在籍期間中にも八代先生、井出先生、石井先生、増田先生、藤森先生、西田先生
と言った強豪の先生方としのぎを削りました。
三段リーグの通算成績は69勝39敗、勝率は.639でした。
また、2011年の新人王戦に奨励会3段として臨んだ際は
当時既にプロになっていた岡山の竜、菅井竜也先生を破ってベスト8に進出しています。
プロ棋士として~
順位戦
プロデビューから2期目の2014年度にてC級1組に昇段します。
B級2組には3年後の2017年度、翌2018年度に現在のB級1組に昇級しています。
鬼の住処と言われるB級1組に既に4年在籍している時点で、千田先生の実力が伺えますね。
オープン戦・トーナメント
デビュー初の王位戦では森内先生、豊島先生、行方先生という実力派の先生を破り
更に先日の竜王戦で藤井聡太先生と熱戦を繰り広げた広瀬先生とのプレーオフを制し、
木村一基先生との挑戦者決定戦に挑みます。
結果負けてはしまいますが、プロデビューして即挑戦者決定とはかなりの上出来だったのではないでしょうか。
その後2015年のNHK選手権で糸谷先生、行方先生、久保先生とここでも強豪を破り
決勝に進出します。
決勝では村山先生に敗れるものの、ここでも初出場にして準優勝と素晴らしい結果を残しました。
初のタイトル戦へ
翌2016年には叡王戦の決勝に進出し、佐藤天彦先生に敗北し準優勝となりますが
その後の棋王戦にて豊島先生、森内先生、久保先生と言った実力派の先生を破り
遂に念願のタイトル戦に出場しました。
タイトル戦では渡辺明棋王と相まみえます。
五番勝負のうち先に2勝を上げ初タイトルに王手をかけますが、
そこから連敗し、残念ながらタイトル獲得とはなりませんでした。
しかしながらこの頃からトーナメント式での強さを存分に発揮しており、近い将来タイトルを取る日も近いのではと
将棋ファンの間では囁かれていました。
念願の朝日杯初優勝、三連覇を目指す藤井聡太先生を破る
そして2019年度の朝日杯にて遂に念願のタイトルを獲得します。
トーナメント本戦で忍者銀屋敷先生、地球代表深浦先生を破ると
準決勝で過去二連覇しており、三連覇を狙っていた藤井聡太先生にも勝利。
藤井聡太先生の三連覇の野望を打ち砕きます。
そして決勝では軍曹こと永瀬拓矢先生を破り、見事優勝を飾ります。
2021年度の順位戦でもA級まであと一歩と迫りましたし、これからが楽しみな若手の棋士の一人ですね。
千田翔太先生 反則負けからコンピュータ将棋の申し子まで
ここからは千田翔太先生の素顔に迫っていきます。
コンピュータ将棋への造詣が深い
コンピュータ将棋に対する造詣が深く、各ソフト毎の癖、棋風みたいなものにもお詳しいそうです。
しかしコメントにもあるように、ソフトを丸暗記という訳でもなく
元々の自分の棋風を残しながら棋力を上げていく工夫をされているようですね。
怪物藤井聡太を生んだのは千田翔太!?
今では棋士の間でもAIによるソフトの研究もかなり進んでいますが
その先駆けとして名を挙げたのが千田翔太先生であることはよく知られていることです。
ところで、現在名実共に最強の呼び声が高い藤井聡太先生ですが
その藤井聡太先生にAIの研究、ソフトを教えたのも千田翔太先生だと言われています。
まだ藤井聡太先生が奨励会三段だった2016年5月頃、藤井先生に将棋ソフトを利用したAIの研究を進め
実際にインストールの方法まで指南したそうです。
そこからの藤井聡太先生の数々の伝説は言うまでもありませんよね。
藤井聡太先生から多々繰り出されたAI越えの一手や達成してきた大記録は、
千田翔太先生のAIソフト指南がなければ誕生していなかったのかもしれません。
藤井聡太先生からすると、千田翔太先生はもしかしたら恩人の一人なのかもしれませんね。
またそんな千田翔太先生ですが、AIソフト研究の先輩としての意地?もあるのか
藤井聡太先生からは2勝されている数少ない棋士の一人です。
ソフト研究をしている者同士、手がわかりやすいなど相性みたいなものがあるのかもしれませんね。

ソフト指しの申し子ゆえ?あの騒動の渦中の人となる
そんなソフト指しの申し子ととしての地位もあるのか、
2016年から2017年にかけて発生した、三浦弘行氏のソフトを使用した不正指し疑惑の件で
将棋ソフトに精通した棋士として千田翔太先生が連盟を相手に見解を報告することがありました。
複数の棋士がソフト指しを指摘する中、結果は三浦弘行先生の潔白が証明され
当時の理事2名の辞任、3名の解任に至った将棋界を揺るがす大きな騒動でした。
それゆえ当時のソフト指しを疑った側の棋士に対する非難はごく少数派ですが今もあり
現在もSNSを覗くと、千田翔太先生への批判が散見されます。
千田先生に関してはあくまで当人の見解を述べたまでの話ではあるのですが
このような騒動に巻き込まれた形になってしまい、後味の悪いものになってしまいましたね。
まさかの反則負け。先後を間違える
そして冒頭でも紹介した、先日の順位戦での先後手を間違えての反則負け。
ちなみに相手がまだ指してないのに指す(二手指し)反則負けは
これまでの歴史でも極稀にあるのですが
初手での前後間違いによる反則負けはこれまでの歴史でも3例程しかないそうです。

それだけ盤面に集中し、勝利を目指していたと考えられることもできますね。
まとめ
千田翔太先生の記事、如何でしたでしょうか。
思わぬ反則負けで、将棋を知らない世間の方々にも名前を知られてしまいましたが
順位戦ではB級1組に在籍し、オープン大会での優勝経験、そして準優勝経験もあります。
何よりタイトル戦に出場したことからも、千田翔太先生はただのネタの人ではなく
非常に実力の高い棋士であることが理解頂けたかと思います。
今では棋士の方が当たり前に行っているソフト研究も、千田翔太先生の手にもたらされた部分が
多分にあると考えてよいでしょう。
これからもソフト棋士の第一人者として、千田翔太先生が各方面でご活躍されることを
心から願っています。
ダン