将棋オールスター東西対抗戦2022 羽生善治&藤井聡太の結果
SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦 2022が先日25日に東京の明治神宮会館にて開催されました。
結果は4勝3敗で東軍の勝利に終わり、第一回大会の雪辱を果たしました(第一回大会は西軍が5-0で勝利)
オールスターと言えば野球やサッカー等その競技の一線級の選手が集まり
エキシビジョンながら非常に我々を楽しませてくれるものですが
将棋も多分に漏れず、非常に私達将棋ファンを楽しませてくれました。
今回はそんなSUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2022の結果を振り返っていきます。
SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦ってなんだ?
2021年に開設されたドリームマッチ。将棋のオールスター戦
2021年に開設されたのがこのSUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦で
もともとは藤井聡太先生がサントリーの看板商品であるお茶
伊右衛門のCMに出演されたのがきっかけで創設されたイベントです。
第一回目から東西に分けファン投票+各予選を勝ち抜いた棋士による
ファン投票+実力の混合マッチでしたが
第二回目にあたる今年2022年は少しだけ改良され
東西人気投票上位3名+予選を勝ち抜いた3名による
東西の6VS6による変則マッチとなりました。
今回の参加メンバーですが
東軍
人気投票
長瀬 拓矢王座
羽生 善治九段
渡辺 明名人(※新型コロナウイルスにより欠場、代打で佐藤康光会長)
予選勝ち抜き
横山 泰明 七段
増田 康宏六段
近藤 誠也七段
の6名に対し、
西軍
人気投票
藤井 聡太竜王
豊島 将之九段
山崎 隆之八段
予選勝ち抜き
糸谷 哲郎八段
斎藤慎太郎八段
稲葉 陽八段
の6名と東西それぞれ非常に豪華なメンバーとなりました。
東西の勝ち抜き組もそれぞれ早指しや詰将棋を得意とするメンバーがしっかりと勝ち上がってきた印象です。
コロナとはいえ、渡辺明名人が欠席されたのは少し残念でしたね。
1手30秒未満の超早指し戦。
ルールは1手30秒未満の超早指し戦で、JT杯やNHK杯、朝日杯、ABEMAトーナメント等含めても
オープン大会の中ではもっとも早指しの部類に入るレギュレーションとなっています。
8時間をフルに使い、2日間で決着をつける重厚なタイトル戦も勿論魅力ではありますが
剣豪の斬りあいの如く刹那で勝負が決まるスピーディさもまた将棋の新たな魅力の一つとなりそうです。
対局結果一覧
ここでは全七局の対局及び結果をダイジェストでお伝えします。
第一試合 羽生善治先生(後手)VS山崎隆之先生(先手)
第一試合は、我らが将棋ファンのレジェンド羽生善治先生と
山ちゃんを諦めない、前期までA級に在籍した独創的な棋風の山崎隆之先生の対局となりました。
過去には山崎先生の投了に対して苦言を呈したと言われる因縁の?対局ですが
そんなことはなく、相掛かりからの終盤駒交換から斬りあいに。
寄せの速さ比べで一歩勝った羽生先生が、後手番ながら勝利。
我らが羽生先生、流石です!
第二試合 近藤誠也先生(先手)VS糸谷哲郎先生(後手)
一手損角換わりを誘導した糸谷先生の挑戦を受けて立つ近藤先生。
早繰り銀で様子を伺い、糸谷先生が先に作った馬を金で押さえつけ
自陣に張り付かせてからは終始ペースを握り近藤先生が勝利しました。
近藤先生の勝利でオールスター待望の東軍初勝利。
羽生先生の勝利と合わせ(2局同時開催だったので、先に終わったのは第二試合のこちらの対局)
東軍が幸先よく2勝を手に入れます。
西軍は森信雄先生門下の連投も及ばず連敗スタートとなりました。
第三試合 豊島将之先生(先手)VS横山泰明先生(後手)
第三試合は、豊島将之先生と横山泰明先生の対局。
連敗スタートの西軍ですが、ここで序盤・中盤・終盤にスキのないエース豊島先生を投入。
相掛かり模様の出だしから横歩取りか飛車角の交換と激しい将棋になります。
7九に打ち込んだ横山先生の王手金取りを桂馬で受け、かつ4三の角打ちは攻防の一手。お見事と言うしかありません。
アマ初段の素人にはとても見えない手でした…
豊島先生が星を取り返し、これで東軍の2勝1敗となります。
第四試合 永瀬拓矢王座(先手)VS藤井聡太竜王(後手)
第四試合はタイトルホルダー同士の対局ということで、盛り上がりを見せる対局と見られていました。
先日の佐藤天彦先生の順位戦と似た形の矢倉模様の出だしから力戦になると思いきや…
6七金右が敗着!?
藤井竜王の腰掛銀と桂馬による攻撃を受けようと33手目
5八にいた金を受けに回したのが敗着級の一手だったようです。
その後4八銀と一度引き、角道を確保してあげることが優先だったようですが
7九と王の早逃げが結果角を取られてしまう結果に。
その後何とか粘る永瀬先生ですが、藤井先生の猛攻に耐えきれず74手にて投了、藤井先生の勝ちとなりました。
30秒将棋でも藤井先生の圧倒的な実力を目の当たりにしました。
藤井先生は二日制、そして早指しでもスキのない将棋を指しますね。
一体どうやったらこんなオールラウンダータイプが出来上がるんでしょうか。
ともあれ、これで西軍もエース2人の活躍で2勝2敗。星を五分に戻します。
第五試合 佐藤康光先生(後手)VS斎藤慎太郎先生(先手)※エキシビジョンマッチ
第五試合は佐藤康光会長と斎藤慎太郎先生のエキシビジョンマッチ。
渡辺明先生がコロナウイルス感染による欠場により急遽の対局だったのですが
不戦敗扱いなのは個人的にちょっと残念な気もします。
十分想定される事態ですし、感染については誰に非がある訳でもありませんから…次回は改善を望みます。
さて、記録上では西軍の3勝2敗となった状態での対局ですが
ここで怪鳥、いや会長、剛腕佐藤康光先生が爆発します。
角交換による出だしからダイレクト向かい飛車に進行。
桂馬交換から斎藤先生の端攻め、桂馬連打を受けきると馬を使ってカナゴマの回収に成功。
最後は回収した金銀と馬を使って斎藤先生を投了に追い込み、佐藤康光先生の勝ちとなりました。
A級棋士同士の戦い、見ごたえのある一局でした。
第六試合 増田康宏先生(先手)VS稲葉陽先生(後手)
3勝2敗で西軍の王手となった状況で第六試合、増田先生と稲葉先生の対局となります。
出だしから早々に定跡をはずれ力戦模様に。
4筋に金銀縦に3枚並ぶ独創的な駒組をする稲葉先生。
それを打開すべく1筋と9筋に揺さぶりをかけながら中央を食い破らんとする増田先生。
中央に陣取るカナゴマを歩を叩き、桂馬を捨てて端に追いやり
空いたスペースを角で猛襲。回収した銀を使って飛車を回収し
最後は大駒二枚とカナゴマを使って稲葉先生を投了に追い込み、増田先生の勝利となりました。
力戦将棋の中で見せた増田先生の歩の叩き方が大変勉強になりました。
これでスコアは3勝3敗。最終局に持ち込まれます。
ビクトリーマッチはエースとエースによるリレー将棋
3勝3敗となり、勝敗を決める1局はなんとリレー将棋。
簡単に言うと将棋のダブルスで、2人1組で5手ずつ指して交代していくという変則ルール。
ルールを簡単にまとめると
1手20秒
1~10手目は羽生善治先生VS豊島将之先生
11手目~20手目は永瀬拓矢先生VS藤井聡太先生
以下10手ずつ交代、繰り返し
という変則マッチ。
それでも600万円が懸かり、かつ自チームの勝敗を決する対局ですから盛り上がらないはずがありません。
本来エキシビジョンの色合いが強いこのルールですが、大変盛り上がる対局となりました。
エース対決らしい一進一退の膠着状態が続く
4名の先生方はそれぞれAIの研究を行っていることもあり、出だしから最新形での駒組が続いていきます。
序盤の7五歩あたりでやや先手善しに見えたのですが
羽生先生の8筋の歩二連打にて形勢をほぼ互角に戻します。
勝敗を分けたのはなんと…
そこから藤井先生の桂馬を狙った7四歩、そして6七に受けで打ち込んだ桂馬が何と敗着級の手となってしまったようです(アユムさんの解説による)
桂馬の使い方においてはトップクラスの藤井先生ですが、受けで指した桂馬はやや空回りに終わってしまったようです。
そこから何とか豊島先生、藤井先生が粘って勝機を見出そうとするも
羽生先生、永瀬先生の正確な差し回しを崩すことが出来ず投了、東軍の勝利と共に600万円を手にすることとなりました。
羽生善治ファンとしては羽生先生の2勝による勝利、これ以上ない結果に終わり僥倖です。
将棋はやはりスポンサー様あってこそ
第二回大会は東軍勝利という形で幕を閉じましたが、
どの先生方も対局の時は真剣そのもので、盤上を離れれば本当に穏やかな表情を浮かべていたのが印象的でした。
豊島先生のブラックジョークは私も大好きなのですが(笑)、
普段の対局ではこのような一面がなかなか見れないのでこういう機会を頂けることは
本当に将棋ファンとしては嬉しい限りです。
不二家さんといい、サントリーさんといい、勿論藤井聡太先生の影響が大きいのは間違いないのでしょうが
どちらかというと地味なイメージの強い、将棋というゲームのスポンサーになってくださったことについては
感謝しかありません。
勿論通常の対局で棋士の先生方の真剣な顔、勝ち負け、指し手等を見るのも楽しいのですが
こういう盤外での素顔を見せてくれる機会を作ってくれることで
もっと多くの将棋ファンが増えてくれることを願っています。
第三回のオールスター戦はどんなルールで、どんな棋士の先生が登場されるのでしょうか。
今から大変楽しみですね。
今回出場された棋士の先生方だけでなく、プロ棋士、女流棋士の方含め
棋士の先生皆をこれからも応援し続けます。
ダン