将棋 学生名人戦でソフト指しの不正発覚
学生名人戦でのソフト使用指し疑惑
将棋界におけるソフト使用指しあれこれ
ソフト指しに関する現在の対応ルールについて
将棋を愛する1将棋ファンとして大変残念な事件が起きてしまいました。
将棋を研究する際に使用する将棋ソフトを、対局中に使用していたとして
学生名人戦の優勝者が失格となってしまったのです。
今回はそんなソフト指しと将棋界について記事を書きます。
どうぞごゆっくりお読みください。
学生名人戦でのソフト不正使用事件
学生名人戦の決勝で起きた事件
2023年度の学生名人戦の決勝で、それは起きました。
優勝を決めた学生棋士の方(将来がある方ですのでお名前は伏せます)が
離席しようとした際に学生委員長以下の彼を取り囲んで離席を認めず、当該学生棋士の方を調べた所
ポケットに入れたスマホ上で将棋ソフトが起動しており、対局中に常時アクセスしている状況だったようです。
決勝の対局中でも何度も席を外し、決勝より前の対局でも不審な挙動が見受けられたということで他の対局者からも指摘があったようです。
結果優勝は取り消し、失格に
その事実を基に学生間で連絡を取り、主催していた新聞社や解説で来られていた棋士の先生方の意見を参照の上、
当該棋士は失格となり、決勝で敗れた立命館大学の亀山さんが繰り上げで優勝という結果になりました。
表彰式の写真でも、当該棋士は写っておらず、繰り上げとなった方々が写真に写っていることから
失格処分となったであろうことが伺えます。
確証が取れない部分もあったと思うけど、対局中に将棋ソフト起動してアクセス出来る環境でスマホをポケットに入れて、離席が多ければかなり黒に近いグレーになるよね。
6.6 追記
どうやらNHKでも報道されたようです。
対局中にソフトを使用して指すのは反則行為
一般的に将棋の対局の際に将棋ソフトを使用して指すのは禁止行為となっており
対局中にソフトを使用していることが明らかになると、ほぼ間違いなく失格の措置が取られます。
入試や共通一次試験の時だってスマホ電源切ってカバンに入れろって言われるでしょ?それと一緒です
理由は、
電子端末を用いて外部にアクセスすることで何らかの便益を得る行為が
公平性が担保されている試験や実技その他の地位を著しく毀損する行為であるため
です。
試験におけるカンニング行為と同一性の高いものであり
それで示された実力や得点には極めて妥当性が乏しくなってしまいます。
つまり疑われるようなことはするな、という話な訳ですね。
しかもこの行為、極めて卑劣なのは
実施者が罰せられるだけで済めば良いのですが
それまでに不断の努力を重ねて来た対局者や大会主催者、支援者がいればその方も含め
多くの人間が積み上げて来たものを踏みにじること。
不正するような奴が大会に出て来て優勝するなんてバカらしいからやってらんねぇ、と有望な棋士が将棋から離れたら一体どうやって責任取るつもりなんでしょうか?
だからこそ不正をした人間には相応の厳しい態度で臨む必要があるわけですね。
失格処分としたことについては、正しい判断だと思っています。
将棋界のソフト使用不正事件簿
もともとはソフト使用は不問だった
もともと将棋ソフトが出だした数十年前の、おおらかだった時代については
将棋ソフトを使用することについて明確な禁止規定はありませんでした。
まだまだ技術が進歩しておらず、人間と将棋ソフトは人間の方が強かったから、対局に影響がほとんどなかったんだ。
しかし実際に携帯電話はじめ端末を使用してソフトを活用した棋士はいたようで
トイレの個室にこもりソフトで導き出された定跡、手筋を用いて
対局の際に指した所、相手は応手出来ずその対局で勝利した、という話も存在しています。
技術が進歩し、ソフトの存在が対局に影響を与えるように
しかしIT技術の進歩に伴い、将棋ソフトはどんどんと性能を上げ、人間との差を縮めるどころか
実力でも人間をも追い越すようになってしまいます。
こうなってしまうと対局の際に、コンピューターが人間では思いつかない手を指示した場合
それを指し続けることで対局の公平性が毀損される可能性がある、ということで
2016年に将棋連盟は対局室への電子機器の持ち込み、および外出の禁止を発表します。
昔は対局中のお昼休憩に、将棋会館近くのお店でランチを食べに行っても良かったんだ。加藤一二三先生なんかはウナギを食べに行ってたりしていたようだね。
将棋界に激震。将棋ソフト使用不正疑惑
この電子機器使用を禁止するようになった背景には、今回のように
将棋ソフトを対局時に使用したのではないかと言う疑惑の事件が発端になっています。
詳細については割愛しますが、羽生善治先生、渡辺明先生、当時AI将棋の申し子と言われていた千田翔太先生はじめ
多くの棋士を巻き込んだ騒動となりました。
結果疑わしきは罰せずという方針により、当事者の三浦先生と将棋連盟は和解という決着となりますが
当時会長であった谷川浩司先生が会長職を辞任し、棋士間でも不穏な空気が流れてしまい、しこりが残る等
後味のかなり悪い結末となりました。
現在は不正防止の観点から、対局前にスマホをはじめ情報端末は預けて使用しないようにした上で対局を行っているよ。
ソフト指しは動画配信者も行っていた過去あり
元奨励会の方も過去ソフト指しでアカウント停止に
ソフト指しに関する問題は今回だけに限らず、インターネット上でも行われています。
過去には、元奨励会の有名な動画配信者の方もソフト指しで対局していたことが発覚し、
アカウント停止の処分を受けています。
実際インターネットでの対局でソフト指しを完璧に防ぐのはほぼ不可能なので、性善説に頼るしかなくなってしまうのですよね。
ダンも何とかかんとか頑張ってアマチュア二段まで上り詰めましたが、
正直な所ソフト指しをしたい衝動に駆られたこともないわけではありません。
しかしソフト指しを一回でもしてしまうと、
己を高める為に積み上げた努力が全て水の泡になること
自分との戦いでもある為、ソフトを使って指した時点で自分に負けることを意味すること
この二点が自分へのストッパーになり、なんとかかんとかソフト指しをせずに済んでいる状況です。
ソフト指しを防ぐのは無理なのか
無くならないソフト指し問題をどうやって解決するのかについて
元奨励会員の古田龍生さんがnoteにてお考えを発信されていらっしゃいます。
仰られていることについて一定の理解は示せる内容となっていますが
離席禁止によるソフト指し防止の効果は絶大だが、そうすると持ち時間1時間以上の対局は物理的に難しくなってくる
そうなった場合、ソフト指しを防ぐという目的だけで持ち時間を決めることが果たして正しいと言えるのか?
という点に対して、明確な答えを出せないですね。。。
まとめ
非常に正解がわかりにくいどころか、全員が納得する答えを出すのが難しい今回の事件かと思います。
しかし、このブログで伝えたかったこととしては
ソフト指し撲滅については、もはや性善説で語ることは難しい
試験中のカンニングと一緒の行為だが、目の前の勝ちがどうしても欲しい場合、その一線を越える人がいないとは言い切れない
ソフト指しが発覚した場合のペナルティと、目の前の対局に勝つことのインセンティブが釣り合っていない
こととなっており、以前の三浦先生の騒動以上の衝撃が
アマチュアの世界とは言え、学生の頂点を決める大会で起きてしまったことは
大変残念に思います。
人間とAIの共存は、21世紀における重要なテーマとなっており
CHATGPTをはじめとした、AIが人間の仕事と遜色ないくらいのクオリティを出す分野も少しずつ出てきています。
その中で、将棋界は人間とAIとの共存について他の業界に先駆けて問題提起され、
今なおソフト指しをはじめとした人間とAIが共存するにあたって完全に解決出来ない問題も抱えています。
一朝一夕には解決しない問題だとは思いますが、人間とAIが、少なくとも将棋界において
今以上に上手く共存出来る未来がやってくることを一人のアマチュア将棋愛好家として願っています。
ダン