羽生善治新会長の誕生と今後の将棋連盟
羽生善治先生が会長になった背景
将棋連盟の仕事と会長の仕事
佐藤康光前会長が残した功績とこれから新会長が目指すこと
将棋連盟の総会にて、我らの羽生善治先生が会長となられたことが発表されました。
小学校の頃から羽生先生を応援してきた身としては、もう感無量です…
今回、そんなタイミングで羽生善治先生が会長となられたことについての記事を書いていきます。
どうぞ最後までごゆっくりとお読みくださいませ。
羽生善治会長誕生と将棋連盟
もともと理事に立候補していた
今回の羽生善治会長誕生の背景についてですが、いわゆる青天の霹靂的な誕生ではなく
4月の佐藤康光前会長の退任に伴い、羽生善治先生自身が役員選挙に立候補していたのです。
なので誰かからの猛烈なプッシュによって断れなくなって、みたいな事態ではなく
自らの意思で羽生先生が立候補された、というのが背景にあります。
ちなみに羽生先生の師匠の故・二上達也先生も連盟の会長を務められたので、師匠と弟子で連盟会長を務められる、ということになるね。
2024年度に将棋連盟設立百周年を迎える
佐藤康光前会長が退任を発表した背景として、
2024年に将棋連盟が設立して百周年と言う節目を迎えるというタイミングも
あったことは否定出来ません。
実際に佐藤康光先生が退任の際にも、百周年の節目のタイミングで、次の方に託すのが良いと判断した、とも仰られているんだ。
百周年という節目に会長たる存在と言えば…
勿論、百周年という節目のタイミングで佐藤康光先生が会長であったとしても
何の異論もなかったでしょう。
佐藤康光先生だって、永世棋聖という永世の称号を持たれているトップ棋士の先生の一人です。
しかし。時代と、その時代に対峙した相手が悪すぎますよね。
タイトル99期保持し、名実共に今でも将棋界のレジェンドである羽生善治先生がいたとなれば
そのタイミングで羽生善治先生が会長になられた上で連盟設立100周年を迎えたい、という考えは
組織として考えると極めて合理的で、それを推進する理由も非常によくわかります。
強調したいのは、佐藤康光先生の会長としてのお仕事はとっても素晴らしくて、非の打ちどころがないくらいしっかり務められた、ということ。だから決してネガティブな退任ではないんだよ。
結果羽生善治先生が、将棋連盟の会長になることとなりました。
今でこそ藤井聡太先生が第一人者としてとてつもない記録を更新し続けていますが、
何十年も前にその道を先に切り開き、歩んだのは羽生善治先生。
藤井聡太先生の大先輩が会長職に就かれた、ということに非常に意義があると思います。
ちなみにどういう訳か将棋連盟の会長は数代に渡り、名人位経験者が務められているようです。
そうなると羽生先生の次は…ある程度候補が絞られるかもしれませんね。
羽生善治会長の仕事と将棋連盟
主にはスポンサー獲得と将棋の普及
将棋連盟の会長の仕事は主に三つあり
スポンサーの獲得(タイトル戦、一般棋戦など)
将棋の普及活動
将棋連盟そのものの運営
と言われています。
特に大事なのはやはりスポンサーの獲得でしょうか。
プロ棋士がきちんと食べていけるように、年間で4名しか新しくプロにしかなれず(編入等の例外は除く)
棋士の母数そのものを増やしすぎないようにして、棋士を守るのが現在の将棋界ですが
大口のスポンサーによる一般棋戦が開催されたり、連盟そのもののスポンサーになり、年間で億単位の収入が
継続的に入って来るようになれば当然プロ棋士全体が潤いますし、
もしかしたらプロ棋士の母数も増えるようになるかもしれません。
当然そうなった時に、会長がネームバリューのある人の方が対スポンサーで考えると話は進めやすいよね。羽生善治ってあの羽生さん!?って。
その意味で、将棋好きの方だけでなく広く一般にも名前が知られている
羽生善治先生が会長になられたことの意義は、極めて大きなものだと思います。
将棋連盟の運営について
将棋連盟は一般的な社団法人、財団法人とは少し特殊な組織運営をされています。(連盟そのものは公益社団法人)
その最たるものが、
連盟そのものの運営が棋士中心であること
で、理事等の顔ぶれを見てもズラリと現役の棋士の先生方が名を連ねています。
ちなみに囲碁の協会でもある日本棋院は、プロの先生方もいるけど理事に大手ゼネコン、メディアの役員の方が名を連ねているよ。
将棋の将来は棋士が中心になって決める、という潔い姿勢は個人的に好感を持てます。
(経営の観点から見たら、外部からある程度知見のある人を入れた方が良いのは間違いありませんが)
羽生先生が直接企業に出向き、どこまで渉外を行われるのかはわかりませんが
将棋同様、大局観を武器に将棋界を良い方向に進めていくと確信しております。
これからが大変!?免状の揮毫
その他に会長の仕事として
アマチュア段位者に対し段位認定をする免状を発行し、その免状に揮毫(サイン)すること
なのですが、実はこれどっからどう考えてもこれから大変になる未来しかないんですよね…
というのも、免状に揮毫する棋士は、一般的に
連盟の会長
名人のタイトル保持者
竜王のタイトル保持者
なのですが、羽生先生が会長になられた時点で
名人のタイトル保持者
竜王のタイトル保持者
共に藤井聡太先生なんですよね。
つまり…免状を申請すると、羽生善治会長、藤井聡太竜王名人直筆の揮毫が入った免状が貰えるんだ。
これはお金出しても欲しいという方が続出してもおかしくない状況です。
ちなみに初段以上~で申請可能で、初段は33,000円(税込)で連盟に免状の申請可能です。
ダンが保有しているアマチュア二段だと、免状は44,000円(税込)。
うん、買う一択ですね。
また届いたら何かの折に紹介したいと思います。
羽生会長が多忙の合間を縫って普及の為にアマチュアの段位免状に揮毫。
頭が下がります。そして頂いた段位免状はマジで家宝にします。
会長専任という概念は存在しない
ちなみに、そんな会長職になられた羽生善治先生ですが
将棋界独特の慣習と言いますか、会長だからと言って本業そっちのけ、なんてことはないんですよね。
会長職としての活動を行った上で、プロ棋士としての活動も並行して行う。
つまり、羽生会長になられてからも順位戦をはじめとした対局には
そのまま羽生会長も参加されます。
佐藤康光前会長は会長職と並行して将棋の研究も行い、A級に在位し続けたバケモノです。怪鳥の二つ名は伊達じゃないです、ホントに。
ただこれ、冷静になって考えると
会長になられてからタイトル戦に出場し、タイトル100期達成
ということも全然可能性としては考えられる訳で
その場合連盟会長羽生善治が、タイトル100期獲得した羽生善治を祝福する
という大変奇怪なことになります。
そんなことをサラッとやってしまいかねないレジェンドが会長になられたので
そんな奇怪な事態を不思議な感情で眺める時がいつかやって来るのかもしれませんね。
佐藤康光前会長の功績
ソフト指し疑惑からのバトン。大変な船出だった
先日の学生名人戦ソフト指し事件が話題になりましたが、
その更に前に、プロ棋士の間でもソフト指しを疑われる事件が発生しました。
結果、竜王戦の挑戦者として対局予定だった三浦弘行先生が挑戦者としての権利をはく奪され
世間にも醜態が晒されることにもなり、事態を上手く収集出来なかったことも含めて
当時将棋連盟の会長だった谷川浩司先生が体調不良を表向きな理由として辞任される騒動となりました。
そのバトンを受け継いだのが佐藤康光前会長です。
言い方は悪いですが、完全に負の遺産を引き継いだ状態での就任となりました。
救世主誕生!?藤井聡太先生の登場
そんねネガティブな状態でのスタートですが、追い風になる要素が以後どんどん降り注いできます。
その最たるものが、史上最年少棋士にして、数々の伝説を今なお築き上げている
藤井聡太先生の登場でしょう。
ソフト指し騒動を吹き飛ばすかのようなインパクトを世間に与え、今なお続く藤井聡太ブームによって
世の中の将棋に対するイメージは一気に変わり、空前の将棋ブームが起きました。
それまでは将棋と言えば中年~シニア世代の娯楽の一環というイメージが強かったけど、若い世代、女性にも将棋が認知され、受け入れられる土壌が一気に出来上がったんだ。
藤井ブームに胡坐をかかず、着々と成果を出す
そんな藤井聡太先生が発端となって起きた将棋ブーム・藤井ブームですが
それに胡坐をかくことなく、着々と成果を出されたのが佐藤康光前会長の素晴らしい所です。
一例ですが
等が挙げられます。
不二家さんがスポンサーの対局では、対局中に不二家さんの商品を召し上がられしっかりとアピールされるなど「さすが怪鳥!」と唸る対応が目立ちました。
また、新型コロナウイルス感染拡大という稀有な局面であっても
大局を誤らず、むしろ巣ごもりに合わせてABEMAトーナメント等で新たな切り口を作り出していく等
その手腕は重ねて申し上げますが、素晴らしいの一言でした。
羽生善治という絶対的な強者によって相当の割を食った棋士の一人ですが、
羽生善治という存在があってもその個性と人間性で連盟をまとめ上げたのは
羽生善治にはない才能と断言して差し支えないでしょう。
会長・羽生善治は前会長・佐藤康光路線を踏襲するのか
結論からいうと、佐藤康光路線を踏襲するのかどうかはわからない、と言うところでしょう。
タイトル99期を獲得し、実績では他の追随を許さない羽生善治にしか出来ないこともあるでしょうし、
独創的な棋風そのままにユニークな発想は佐藤康光にしか出来なかったこともあるでしょうから…
でも断言出来るのは、今回のバトンの渡し方はかなりスムーズで上手く行ったということ。羽生会長の手腕に期待できるのは、佐藤康光という存在がしっかり地盤を固めてくれたからこそなんだよね。
若き頃は島研で腕を互いに磨き、そして年を重ね今度は将棋界全体を背負って立つ立場になった二人。
そしてそれをやることに反対出来ない、確かな実績、人間性。
連盟の仕事も勿論ですが、本業のプロ棋士としてのお二方の活躍も願わずにいられませんね。
まとめ
今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。
会長・羽生善治が出来るのも、前会長・佐藤康光の存在・実績があってこそ
羽生善治会長の誕生は、将棋界にとって100%プラスでしかない
羽生善治が描く将棋界の未来は、楽しみしかない
これからも羽生善治会長・佐藤康光前会長をはじめ
連盟に所属されるすべての先生方の将来を応援し続けます。
ダン